第19回エシカルインタビュー<石岡鈴木牧場(石岡市)>

茨城県内のエシカルな取り組みを紹介する「エシカルインタビュー」。
今回は、牛と環境、そして人に負担をかけず、「好循環」する酪農を目指す石岡鈴木牧場を訪ねました。
「おいしい乳製品は土作りから」という哲学のもと、リターナブル瓶の使用や、地域の農家や製材業者との連携などを通じて、サステナブルな循環型酪農を実践しています。消費者や取り扱い店舗などファンとの深い関係性を大事にし、価値観をともにする「仲間」の輪が広がっています。

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2代目となる鈴木昇さん(写真左)を中心に、その妻・ともえさん(写真右)、息子で3代目の績さん(写真左から2番目)、そして今回インタビューにご協力いただいた妻・美登里さん(写真右から2番目)で循環型の酪農を実践しています。

おいしいヨーグルトとリターナブル瓶の誕生

石岡鈴木牧場の代名詞でもある「おいしい乳製品は土作りから」の精神は、1970年代に生まれました。当時の酪農は生産量を追求する拡大路線。その方法では牛に負担をかけ、病気がちになる状況に「心から楽しい酪農ができない」と鈴木さんは感じていました。そんな中、「健康に牛を飼う」酪農を提唱する畜産コンサルタント故熊谷氏に出会い、「牛を健康に育てるには餌が、良い餌を作るには土が大事」という教えに感銘を受けたそうです。

そして、牛の糞からじっくりと時間をかけて堆肥を作り、その堆肥で畑の土を育てて、飼料用の穀物や牧草を自給するという循環システムを作り始めました。土作りは時間と根気が必要で、すぐには成果が出にくいため、ともに始めた酪農家たちは次々と離れていきましたが、試行錯誤を続け、信念を貫きました。その結果、牛は病気になりにくくなり、牧場を訪ねた人々から「牧場特有のニオイも少ない」と言われるなど、確かな手応えを感じるようになったと言います。

また、同牧場の人気商品、「石岡鈴木牧場ヨーグルト」が誕生したのは2004年頃。
ある時、こだわりのある商品を求める常総生協から「オリジナル牛乳を生産して欲しい」という打診が舞い込みました。しかし、牛乳は大量生産しなければ採算が合わず、保存期間も短いという課題がありました。
そこで、母のともえさんが趣味で作り、周囲に好評だったヨーグルトを販売するというアイデアが生まれました。
製品化にあたり、当時流行していた「ロハス(健康と環境、持続可能な社会生活を心がけるライフスタイル)」の考え方に深く共感し、初めからリターナブル瓶を採用。こうして牧場の哲学を象徴する瓶入りのヨーグルト事業がスタートしました。

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ゆったりした空間でのびのび暮らす牛たち。地元製材所等から譲り受けた「鉋屑」を敷くこともあり、地域の資源も余すところなく活かしきります。

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牛舎の隣に広がる牧草地。1ヘクタールあたり2頭分の糞を還元することで土地に負荷をかけない循環酪農をしています。

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(右)自家製の飼料。発酵し、漬物のようなおいしい匂いがします。
(左)撮影のため突然のおやつタイム。広い牛舎でのびのび暮らす牛たちは、のんびりと草を喰みます。

リターナブル瓶がつなぐ、価値観をともにする「仲間」の輪

石岡鈴木牧場はリターナブル瓶という循環システムを通じて、消費者や取り扱い店舗と価値観でつながる確かなコミュニティを築いています。主な商圏である水戸・つくば市内の販売店では別店舗で購入した瓶でも返却できる仕組みを整え、生協ではほぼ100%、一般店でも約6割という高い回収率を維持しています。とくに月に一度出店するマルシェ「つくいち」では、常連客が空き瓶を持参するため、回収率はほぼ100%に達しているそうです。

また、営業活動はほとんど行わず、牧場の理念に共感した店舗側からの申し出を受けて取引を開始するスタイルです。
「提携前には必ず牧場を案内し、考え方を共有しています。価格ではなく価値で商品を評価してくれるパートナーとだけ提携をしています」と鈴木さん。
その結果、ブルーボトルコーヒーや各地のレストランなど、サステナビリティを重視する企業・店舗との長期的な信頼関係が生まれました。

こうした対面販売や提携先とのつながりは、単なるモノの売買を超えたコミュニケーションを生み出しているように感じられます。

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カフェラテをごちそうになりました。低温殺菌のため乳臭さがなく、コーヒーのおいしさも引き立てます。

今後の展開について

石岡鈴木牧場の循環の哲学は、「牛の命を最後まで大切にする」取り組みにまで及んでいます。健康的な環境と飼料で育てるため、牛たちは7〜8歳、中には12歳まで生きるなど長生きで、最後まで健康を保っています。役目を終えた牛は、提携する食肉業者を通じて価値ある食肉として加工され、「石岡鈴木牧場の牛肉」としてレストランなどで提供されています。その肉質は赤身が強く、噛むほどに旨味が増し、和牛とは異なる価値を持つと高く評価されています。

今後の展望としては、「規模拡大は目指さず、既存のファンとの関係性をより深めることを大事にしていきたいです」と鈴木さん。
その一環として、牧場見学やチーズ作りなどの体験イベントを不定期で開催しています。牛や土に直接触れ、食が生まれる背景を体感してもらうことで、ネットの情報だけでは得られない「自分の感覚」を大切にして欲しいと考えているとのこと。
筑波山麓の澄んだ風に吹かれながら、石岡鈴木牧場の価値観に共感する「仲間」入りをしたいと思う取材となりました。

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牛のマークが「かわいい」と評判のリターナブル瓶。ペン立てや小物入れに使うファンも少なくありません。

●石岡鈴木牧場ヨーグルトチーズ工房
アクセス 石岡市大砂10383-1
電話番号 0299-23-1730
Instagram https://www.instagram.com/ishiokasuzukifarm/